やる気や忍耐力は遊びの中で育つ! 勉強では得られない効果を解説
「自分と向き合う力」「自分を高める力」「他者とつながる力」など、テストの点数などで表せない能力を「非認知能力」といいます。この力を伸ばすためには、遊びの時間こそが重要であることをご存じでしょうか?
中山芳一先生の著書『マンガでやさしくわかる非認知能力の伸ばし方』より、遊びの時間が子どもにもたらす効果についてご紹介します。
※本稿は、中山芳一著『マンガでやさしくわかる非認知能力の伸ばし方』(日本能率協会マネジメントセンター)から一部抜粋・編集したものです。
遊びは非認知能力を伸ばす
みなさんは、お子さんが遊んでいるときに、ついつい「いつまで遊んでいるのっ!?」とか「そんなに遊んでばかりじゃなくて、勉強もしなさい!」と声をかけてしまったことはありませんか?
私たち大人の中では、どうしても遊びよりも勉強のほうが優先すべきことのようにとらえてしまいがちです。
しかし、子どもの権利条約の第31条にもあるように、子どもたちにとってスポーツや文化活動への参加もさることながら、遊んだりぼーっとしたりする時間もとても大切であり、権利として認められています。
【子どもの権利条約】
第31 条 休み、遊ぶ権利…子どもは、休んだり、遊んだり、文化芸術活動に参加したりする権利をもっています。
もちろん、ここでも親子の合意づくりは大切ですので、いつまでも遊びほうけていてよいといっているわけではありません。
その上で、遊びは決して勉強よりも価値のない時間ではないこと、そして、お子さんのなんらかの非認知能力を伸ばすために欠かせない時間であることを確認しておきましょう。
みなさんは、テレビゲームやオンラインゲーム、オニごっこやドッジボール、トランプや折り紙、けん玉などを遊びだと思っていませんか?
たしかに遊びとしてとてもイメージしやすいものばかりだと思いますが、じつは、こうしたものが必ずしも遊びであるとは言い切れないのです。
遊びとは定義の上で「やらなければならないこと」ではなく、お子さん自らが「やりたいこと」を意味しているのです。
そのため、決まったなんらかの活動が遊びなのではなく、たとえば勉強としてとらえている計算カードを楽しくて次々やりたいと思ってやっているのなら、計算カードも遊びになります。
一方で、本人がやりたいことではなくても、大人たちによって外側からアメ(ご褒美)とムチ(罰)などを与えられてやっていることを「遊び以外の何か」……たとえば仕事や勉強といったものとして位置づけています。
そのため、やっている何かを遊びとするのではなく、どうしてそれをやっているのかという意味や理由によって遊びかどうかを判断していることになります。
遊びには「楽しい」感情が必要不可欠であり、自分の内側から込み上げてくる意欲(内発的意欲)によって遊びは「遊び」として成立します。
そして、小学生以降の場合は、学校が終わったあとの自由な放課後こそ遊びの時間になりやすいのですが、近年ではこの時間がどうしても学習塾や習い事などの時間に占められてしまいがちです。
別に、学習塾や習い事がよくないと言っているわけではないのですが、どうしてもこれらと遊びとの間には決定的な違いが出てきてしまいます。
それは、自分から始めているのかどうか、さらには子どもたちがその時間に自分たちで責任を持てているかどうかです。
「自分事」そのものですね。
つまり、遊びとは最高の自分事になるのです。
たとえば、学習塾や習い事が面白くなかったら、子どもたちはだれのせいにするでしょうか?
多くの場合、塾や習い事の先生が面白くないというのではないでしょうか。
この点については、テレビゲームについても同じことがいえそうです。
もし、ゲームが面白くなければ、ゲームメーカーのせいにされてしまいかねませんよね。
一方で、子どもたちが自分たちだけで外遊びをしていたらどうでしょうか?
仮に面白くなくなったとしても、塾や習い事の先生、ゲームメーカーのように与えてくれる側は存在しません。
そのため、自分たちで面白くしていかなければならないのです。
前述のとおり、遊びは最高の自分事です。
だから、常に自分のやりたいことでもあり、自分でなんとかしなければならないことでもあります。
当然ですが、自分からやりたいというやる気や、前向きに物事を考えようとする楽観性などの「自分を高める力」を意識して伸ばしていくことができるでしょう。
また、イヤなことや難しいことがあっても、そこをなんとかしようとする忍耐力や回復力などの「自分と向き合う力」も意識して伸ばしていくことができるかもしれません。
さらに、自分ひとりだけの遊びではなく、複数の遊び仲間たちと一緒に遊んでいるのなら、「他者とつながる力」も意識して伸ばすことができそうです。
将棋のコマではなく指し手になれ……というお話をしましたが、まさに遊びは最初から指し手として臨むことができるという点で、非認知能力を伸ばしやすくなっているといえます。
『マンガでやさしくわかる非認知能力の伸ばし方』(中山芳一著/日本能率協会マネジメントセンター)
2000年にノーベル賞経済学賞を受賞した、シカゴ大学のジェームズ・ヘックマン教授の幼児教育の研究がきっかけで注目され、日本でも2020年の教育改革の核として盛り込まれた「非認知能力」。
IQや学校のテストのように数値化できる認知能力に対し、非認知能力とは、「目標を達成するための勤勉さ」「意欲」「知的好奇心」「協調性」「自己肯定感」「表現力」など、数値では測定しにくい総合的な人間力を指します。健やかな心を育み、将来の幸せと成功につながることから、「あと伸びする力」とも言われています。
先行きが見えない現代社会では、約8割の親が「失敗しても立ち直れて成長できること」「自分の力で道を切り開けること」といった「非認知能力」の高い子に育ってほしいと願っているといます。
本書では、非認知能力について解説するとともに、マンガも交えながらわかりやすく家庭教育の中で非認知能力を高める方法を紹介します。