子どもをバイリンガルに育てる方法は?異国の子育てでわかった「1言語集中」の効果

シム・ファルギョン
2024.12.27 15:40 2025.01.17 11:50

テレビには頼らず本で英語を学ぶ

本を読む子ども

小学校に入ると、本格的に英語・韓国語の2言語を使うようになった。英語は親が教えることはできず、教える必要もないと思ったため、学校の授業に全面的に頼った。また、英語を学び始めると、本を読んでさらに勉強するようになった。

私たちがアメリカに来た当初にもらったアドバイスでは、子どもに面白いアニメやテレビ番組をよく見せるといいということだった。そうすれば、英語が自然とできるようになるというのだ。

もっと早く英語ができるようになってほしいと思わなかったと言えば嘘になるが、テレビに頼ると小さいものを得るためにより大きなものを失うような気がして、これまで通りまずは韓国語の本を読ませ、だんだんと英語の本に興味が行くように誘導した。結局のところ、英語を学ぶ際も、映像より本のほうがはるかに効果的だった。

子どもたちは2言語を使うことで2倍の知識を得た上、習得した知識を状況に合わせて使う能力も身につけた。それだけ頭脳が多くの情報を得て、認識し、処理する能力が伸びていったのだ。自分の考えを述べるとき、状況に応じて違う言語に素早く切り替える力もついたため、コミュニケーション能力も発達し、相手の話の脈絡を把握することもうまくなった。

さらには、問題解決能力や状況認識の柔軟性も身につけた。2言語を入れ替えながら使う過程で思考の幅が広がり、より効率的でクリエイティブなアイデアを発想できるようになったのだ。このように小学校の頃からみっちりと言語について学んできたため、自然と言語に対する好奇心が生まれた。

母国語の基盤を固めて思考能力を伸ばす

勉強する中学生 高校生の女の子

中学校に進学すると南米出身の友達が増え、自然とスペイン語を学ぶ機会もできた。そうして扉が開かれた外国語の勉強は、高校でも続いた。難しいAP試験でも高得点を取り、使える言語が1つ増えた。

次女ヘウンの場合、APのクラスの先生が大きな力になった。その先生は、授業のたびに生徒たちに「どうして家で毎日スペイン語を使う君たちより、ヘウンのほうが上手なの?」と言っていたそうだ。この授業を取っていた子たちのほとんどが南米出身で、スペイン語が母国語だからだ。

ヘウンは高校2 年生を終える頃、スペイン語で賞までもらった。生徒の60%が南米出身の学校でスペイン語の賞をもらったことはヘウンにとって大きな成果であり、大学に入ってからも勉強を続けた。

末っ子のヘソンも姉たちと同様、スペイン語に続いてフランス語に興味を持って勉強している。大学でも新しい言語を学ぼうとするわが子たちに、幼くして2言語を使っていたことが役立っているのか聞くと、もちろんそうだと答え、バイリンガルの利点をこのように説明した。

・文脈から単語の意味を素早く類推できる。

・言語に対する勘がいい。

・新しい単語を楽に覚えられる。

・作文がうまくなる。

・2つの言語が持つニュアンス、文法、構文、発音の違いがよくわかる。

外国語教育において第一に強調したいことは、必ず母国語の基盤を固め、思考能力を伸ばすべきだということだ。 そうやって作られた土台の上で他の言語を覚えるようにし、生活のなかで両方の言語を使えるように導かねばならない。小学生のうちに2 言語を使えるようになれば、スピーキング、クリエイティブな思考、コミュニケーション、認知能力も同時に発達させることができるのだ。

シム・ファルギョン

シム・ファルギョン

韓国でキリスト教教育で修士学位を取得した後、同じ大学で神学を学んでいた夫と結婚。夫の留学を機にアメリカに移住。アジア人移民は社会的にはマイノリティーであり、さらに牧師の家庭だったため経済的にも苦しかったが、入試コンサルティングはもちろん、塾にも行かせず、一般の公立学校に通った3人の娘全員をハーバード大学に入学させた。

3人の娘をハーバードに合格させた 子どもが自ら学びだす育て方

『3人の娘をハーバードに合格させた 子どもが自ら学びだす育て方』(シム・ファルギョン、吉川南 [訳])

牧師の夫の留学をきっかけに、幼い長女と次女を連れて一家でアメリカに渡米。ただ、牧師の家庭で十分なお金もなく、現地の学校に通う娘たちは「アジア系のマイノリティ」。そんな環境で、塾や入試コンサルティングにも頼らず、3人の娘それぞれの才能と個性を最大限引き出し、世界トップ大学に送り出した母親の家庭教育のすべてが詰まった1冊。