定型発達なのに落ち着きがない…今増えている「発達障害もどき」の原因は?
発達障害と同じような特徴が見られるのに、実際には診断がつかない「発達障害もどき」の子どもが増えているのをご存じですか? その原因は、子どもの脳が本来あるべき順番で育っていないことによる「脳の成長バランスの崩れ」にあると、医師の成田奈緒子先生は指摘します。
本記事では、「発達障害もどき」改善のために知っておきたい、「脳の成長の段階」について、成田先生の著書より抜粋してご紹介します。
※本書は、成田奈緒子(著)このえまる (イラスト)『マンガでわかる! 「発達障害」と間違われる子どもたち』(青春出版)より一部抜粋、編集したものです。
※「発達障害もどき」は、診断名ではありません。成田奈緒子先生が診療を通して出会った子どもたちの症候を見る中でつくった言葉です。
脳の成長で大事なのは「育つ順番」です
発達障害もどき改善のためには、「子どもの脳育て」が欠かせません。ただ、脳育てと言っても特別なことをするわけではないので、安心してください。具体的な「脳の育て方」をお伝えする前に、まず、脳が育つ仕組みを押さえておきましょう。
人間の脳は、生まれてから約18年の間にさまざまな機能を身につけながら発達していきます。脳の発達の順番は、誰でも同じです。
最初に発達するのが、脳の中心にあり生きるのに欠かせない機能を担う「からだの脳」、次に発達するのが大脳にある「おりこうさん脳」、そして最後に成長するのが前頭葉に位置する「こころの脳」です。
それぞれの働きや発達の時期は、図をご参照ください。
実は、健全な脳を育てるには「からだの脳→おりこうさん脳→こころの脳」という順番で育てることが大事です。この順番を無視して、健やかな脳の発達を促すことはできません。
たとえば、こころの脳はおりこうさん脳で十分に知識や情報などを記憶し蓄積した後、それらを前頭葉で統合するかたちで発達します。つまり、おりこうさん脳がしっかり発達していなければ、こころの脳も発達しないということです。
同様に、基本的な身体活動(呼吸・体温調整など)を支えるからだの脳が育っていなければ、おりこうさん脳は、よく成長しないことが研究によって明らかになっています。
脳の成長バランスが崩れると「もどき」に
脳の発達は「家づくり」にたとえられます。家を支える土台となる1階が、からだの脳。からだの脳の上に乗る2階がおりこうさん脳です。こころの脳は、からだの脳とおりこうさん脳とをつなぐ階段の役割を果たします。
イラストを見ていただければ、一目瞭然なのですが、土台となる1階部分、つまりからだの脳がどっしりとつくられていなければ、おりこうさん脳も、こころの脳も、不安定になってしまいます。からだの脳がしっかりと発達していないと、脳全体のバランスが崩れてしまうのです。
脳のバランスが崩れると、「落ち着きがない」「集団行動が苦手」「ミスや忘れ物が多くなる」といった行動が現れ、学校生活などがうまくいかなくなることもあります。これらの行動は発達障害で見られる症候に似ているため、からだの脳が育っていない子が「発達障害」と誤解されることがしばしばあるのです。まさに、これが発達障害もどきと言えるでしょう。
また、たまに、10歳以下の子どもをお持ちの親御さんが「うちの子、すぐに手が出るので発達障害ではないかと思って……」と、相談に来られることがあるのですが、脳の発達から考えれば、10歳以下の子どもが衝動を抑えられなかったり、人の気持ちを想像できなかったりするのは、普通です。お伝えした通り、想像力などを司るこころの脳は、10歳以降に完成していくからです。
程度の差こそあれ、低年齢のうちは、友達とのトラブルなどは起きて当たり前。脳がまだ完成形に至っていないことを忘れないでくださいね。
成田奈緒子(著)このえまる (イラスト)『マンガでわかる! 「発達障害」と間違われる子どもたち』(青春出版)
15万部のベストセラーをマンガ化!
発達障害と呼ばれる子どもが劇的に増えています。文科省によると発達障害が疑われる子は、この13年で約10倍に。ただ、子どもの脳・育ちに向き合ってきた著者は、増えているのは発達障害ではなく「発達障害もどき」ではないかと話します。発達障害もどきとは一体何か、発達障害もどきから抜け出すにはどうすればいいのか――。
35年以上の臨床経験をもつ小児科医が 増え続ける発達障害児の中にいる「発達障害もどき」について解説します。
マンガと図解でわかりやすい! 「発達障害もどき」とは何か、発達障害もどきかもと思ったとき、周囲の大人が何をすればいいのかがよくわかる一冊。