子どもに「発達障害のような症状」が…脳内科医が指摘する睡眠の問題

加藤俊徳
2023.11.08 17:53 2023.11.24 11:40

外をみる男の子

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ここ数年、発達障害をテーマにした書籍が相次いで出版されており、ベストセラーになっている本も出ている。韓国では自閉スペクトラム症の弁護士が活躍する『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』といったドラマが作られるなど、発達障害という疾患はますます私たちの身近になってきた。

発達障害が世間で認知された一方、「わが子も発達障害なのでは?」と不安を感じてしまう保護者も多いという。そんな不安を抱えたら、どうすればよいのか? 30年以上、発達障害の子どもを診察してきた脳内科医の加藤俊徳先生に、対策方法を聞いてみた。

発達障害が増えてきた

悩む女性

――私は小学生の男の子の子育て真っ最中の親でもありますが、最近、まわりの知人、保護者の友だちの中で「うちの子って発達障害かも」と悩まれている親御さんがたいへん多いと感じます。実際にその数は増えているのでしょうか。

最近増えてきましたね。私が発達障害の子どもを積極的に診察し始めた20年前と比べても、「うちの子どもは発達障害かもしれなくて……」と不安に感じ、診察される親子は増えたと感じます。ただ、前回(第1回の記事リンク)もお話ししたように、発達障害のような症状が出ているからといって、ただちに「発達障害だ!」と決めつけるのは、早計の可能性があります。

――発達障害のような症状が出る原因はさまざまとおっしゃっていましたね。その意味で、誤診とは言いすぎかもしれませんが、安易に「発達障害」と診断されることが増えたということでしょうか?

はい、そういうことなんだと思います。なぜなら、「発達障害だ」と決めてしまうほうが、保護者も医師も、おそらくはその後の対応がラクになると考えているからです。ただ、発達障害の診断をすることが、解決につながるか、根本的によくなるかどうかには疑問が残ります。見え隠れするさまざまな症状には複数の原因があることや、脳が個性的に成長していく点にあまり目を向けていないからです。さらに、「脳発達スペクトラム」といった見方も持っていません。

「まるで発達障害」を引き起こす原因は、睡眠と運動にある

――「まるで発達障害のように見えてしまう」原因にはどんなものがあるんですか?

横になる女の子

さまざまな研究からわかっていますが、睡眠不足や運動不足、肥満などは、発達障害の症状を出現・悪化させる要因です。夜遅くまで起きていて、睡眠が十分に足りなかったら、「発達障害のようになってしまう」ということ。あるいは、運動不足だと「発達障害のようになってしまう」ということなんです。肥満になれば、前頭葉の働きが低下し、注意力、集中⼒が続かなくなり、ADHD(注意欠陥多動性障害)の症状が増強します。

――なるほど……では、たとえば睡眠不足を解消したり、運動不足を解消することで、発達障害のような症状や行動が解消されたりすることもあるということですか?

はい、本の中でも「肥満を解消することが大事」と書きましたが、発達障害の症状が出ている子には、運動不足の子も多いです。私のクリニックでも、多動で悩む子どもが受診に来られていましたが、運動指導をすることで明らかに症状が軽くなりました。発達障害の子は特に体を支える筋肉が弱いことが多いです。椅子にもまっすぐ座ることができず、グニャグニャしてしまいます。運動指導することで、体を支えることができるようになり、発達障害の症状も軽くなっていくことがほとんどです。

――そうなのですね。生活環境も大事ということですね。

もちろんそうです。本のなかで「睡眠不足を解消する」ということを書きましたが、実はこれが発達障害の症状に悩む方にとって、いちばん重要な生活習慣の改善かもしれません。

「発達障害の子の9割」が睡眠の問題を抱えている

――睡眠不足が健康によくないのは何となくわかりますが、発達障害の場合も影響が大きいのですか?

はい、クリニックに相談に来る子どもの約9割が、睡眠に問題を抱えているのです。端的に言うと、ほとんどの子どもには眠る時間が足りていません。幼児期から小学生くらいの時期であれば大体最低でも10時間前後の睡眠が必要ですが、ほとんどの子どもは睡眠時間を確保できていません。悩んでいるのであれば、何よりもまず初めに手を付けていただきたい睡眠時間を伸ばす改善です。

10時間睡眠で元気な昼間を準備する

――わが家もそうですが、共働きのご家庭が増えて、夜遅くに眠る習慣のお子さんも増えたのではないでしょうか。

親御さんも大変ですよね。でも、わが子のことを考えるなら、何よりもまず睡眠の改善には手をつけていただきたいです。「発達障害様(よう)の症状」とお話しましたが、睡眠不足の場合に、「まるで発達障害のような」行動をとることは非常に多いです。なぜかというと、発達障害自体が「覚醒の問題」だからです。

加藤俊徳

加藤俊徳

新潟県生まれ。脳内科医、医学博士。加藤プラチナクリニック院長。 株式会社「脳の学校」代表。昭和大学客員教授。発達脳科学・MRI脳画像診断の専門家。脳番地トレーニングの提唱者。小児から超高齢者まで1万人以上を診断・治療。