「子どもの言語能力を高める」ために、幼児期の大切な4つのポイント

西剛志
2024.04.01 11:53 2024.04.15 11:50

笑顔の子どもと親

子どもが成長するために大切な、インプット=聞く力、アウトプット=話す力を、バランスよく伸ばす方法について、脳科学の視点から考えてみましょう。脳科学者の西剛志さんがお話します。

※本稿は『PHPのびのび子育て』2020年7月号から一部抜粋・編集したものです

「聞く力」「話す力」の重要

これまで「聞くこと」と「話すこと」は、脳の中の別々の部位が働くと考えられてきました(脳のウェルニッケ野=「聞くこと」、ブローカ野=「話すこと」を担当)。

しかし、最新の研究によって、私たちは誰かと会話しているとき、意外にも「聞く部分」が活性化することがわかってきました。

面白いのが、英語を母国語レベルで話せる人の例です。英語が苦手な人が相手に話そうとすると「話す部分」のみ活性化して「聞く部分」はほとんど反応しないのですが、英語が流暢な人ほど、「聞く部分」が活性化するのです。

つまり、うまく話せる人ほど、”相手がどんなことを話すかを予測して聞く”という力が高いことがわかってきました。

一方、音声を聞くと口が動いてしまうことがありますが、聞くときに「話す回路」(運動を司る部分)まで活性化することもわかっています。子どもは母親から言葉を聞くと、同じ言葉をそのまま返そうとしますが、まさに、聞くことと話すことは表裏一体なのです。

聞く力と話す力のバランスが悪いとどうなるのか?

頭を抱える女の子

ここでは、この2つの力と、そのバランスについて考えてみましょう。

・「聞く力」とは?
音声を聞き取る力には2種類あります。それは「聞く力」と「聴く力」です。聞こえてくるものをキャッチするのは「聞く力」、集中して積極的に理解しようとするのが「聴く力」です。聴く力が高い子どもは、コミュニケーション力も高く、学習力にも直結することが示されています。

・「話す力」とは?
自分の考えやアイディアを言葉を通して表現する力です。相手にもわかりやすく話せると、将来どんな分野でも成功しやすくなります(自己肯定感まで高まることも示されています)。わかりやすく話すには、言語力だけでなく、相手の気持ちを理解する力や論理的な力も必要とされます。


聞く力はある>話す力がない場合は…
ハーバード大学の研究では、自分のことを話すと、脳の司令塔とも言われる「前頭前野」と報酬系が活性化することがわかっています。聞いているだけで自分のことを表現できないと、脳が活性化しにくく、本来の能力を発揮できないということなのです。

幼少時代に内気な子は、相手や周りの目を気にして、十分な自己表現ができない場合もありますので、愛情をもってたくさん話しかけてあげることも大切です(そうすることで、社交的になるという例も多数報告されています。

話す力はある>聞く力がない場合は…
相手の話を聞かずに自分のことばかり話す子は、自分の欲望を抑制することができない傾向があるため、脳の中でもセルフコントロール力を司る前頭前野の活性が落ちる傾向があります。

実際に話が長い人は、前頭前野の活性が低くなり、自分がどこまで話したかを忘れたり、記憶力まで落ちることも報告されています。また、話の内容を理解する力も落ちるため、ひとりよがりになりやすく、学習能力にも影響することがあります。

聞く力と話す力を幼児期に伸ばす4つのポイント

男の子と女性

ここでは、子どもの「聞く力」と「話す力」を伸ばすために親としてできる具体的な方法をご紹介します。

1. 実況中継をしてあげる
「聞く力」と「話す力」を同時に伸ばすためには語彙力が必要となります。海外の生後16カ月~24カ月の子どもの研究では、話しかける回数の多い母親の子は、そうでない子に比べて語彙が4倍も多くなることが判明しました。

子どもには親の意見を伝えるより、「積み木を積んでいるんだね」「お人形さんはケーキを食べているんだね」などと実況中継してあげると、より言葉に意識を向けてくれるので、言葉の力が伸びやすくなります。

2. 間をとってしゃべる
「これはお花だね~」とすぐに伝えるよりも、「これは何かな?……、あっ、お花だね~」と伝えたほうが、お花という言葉をより聞こうとすることがわかっています。

これは「ツァイガルニック効果」といって、間をあけることで、脳が次にどんな言葉がくるんだろう? と予測するため、より好奇心をもって次の言葉を知りたくなる現象です。世界の文豪として有名なゲーテの母親もこの方法を使って、ゲーテを天才に育てたと言われています。

親子

3. 人に教える習慣をつくる
「話す力」を育む最強の方法は、人に教えることです。人に教えるためには、内容を正確に理解しなければならず、それを相手にわかりやすいように説明する力が求められます。そのため、人に教える子ほど学習能力も高く、「話す力」が高いことが知られています。

たとえば、子どもが積み木をうまく積んだときに「すごいね!」ではなく「どうやって積んだの? ママにも教えて!」と伝えてみるのもおすすめです。子どもは喜んで話すようになりますよ。

4. 音楽を聞かせる
不思議なことに、幼少期に音楽を聞くと言語能力が高まることがわかっています。ワシントン大学の研究では、9カ月の赤ちゃんに音楽に触れさせると「会話に関する脳の部位」の成長が促進されることが報告されています。

また4~5歳の子どもでも、音楽を聞き取る能力が高い子ほど、言語能力が高い傾向があります。音楽と言葉には共通した音のリズムがあるため、音楽で同時に言葉のリズム感が養われるのかもしれません。

幼児期に大切な土台づくり

言うことを聞かない男の子

コミュニケーション能力は、子どもが将来大人になって幸せな人生を送るために最も大切な力の1つです。米国が75年かけて行なった幸せの研究では、幸福度を高めるために最も大切なことは、「心を許せる人が1人以上いる」ことだそうです。

コミュニケーションは、人と人のつながりを大切にすることから始まります。どんなに勉強ができても、人の話を聞かなかったり、自分を表現できなかったりする人は、本当の幸せを感じることが難しいのではないでしょうか。

「聞く」「話す」に関係する脳の発達は、幼少期の親との関わりが特に重要と言われています。親から「なんでこんなこともできないの!?」と言われ続けた子どもと、「そっか、じゃあ今度やるときはどうするの?」と言われていた子どもでは、発達がまったく異なってくるのです。

「実況中継」「間をあける」この2つだけでも、1日5分実践すれば効果が期待できます。私の3歳の息子にも大きな変化がありましたので、ぜひ楽しみながらやってみてください。

西剛志

西剛志

脳科学者(工学博士)。2008年、企業や個人を成功に導くための脳科学的なノウハウ を提供する会社を設立。脳科学を生かした子育ての研究も行ない、全国の幼稚園、こども園・保育園などで1万5000人に講演会などを提供。テレビやメディアなどにも多数出演。著書に、『世界一やさしい自分を変える方法』(アスコム)、『脳科学的に正しい一流の子 育てQ&A』(ダイヤモンド社)など海外を含めてシリーズ累計32万部突破。