「コミュ障」と「コミュニケーション障害」は別物…目が合わない子も練習で変わる
近年、「コミュ障」というスラング(俗語)が主にインターネット上を見かけることが増えました。医学上の診断とは違う意味で濫用されているにもかかわらず、「だから仕方ない」「治らない」「変わらない」といったニュアンスが含まれてしまいがちです。
プロコーチ/NLPマスタープラクティショナーの田嶋英子さんはこのいわゆる「コミュ障」は、持って生まれた属性ではなく、後天的に身につけることができる「スキル」だと語ります。本稿では、「目を合わせられない」子どもと、おうちで出来るアイコンタクトの練習法を紹介します。
※本稿は、 田嶋英子著『「うちの子、コミュ障かも?」と感じたら読む本』(青春出版社)から、一部抜粋・編集したものです。
コミュ障は「通信障害」のようなもの
・人に話しかけられない
・自分のことばかり、一方的に話してしまう
・話をするときに、人と目を合わせられない
・言葉より手が先に出る
・人の話を聞けない
・言いたいことが言えない
・人の視線が気になる
・人の輪に加われない
・集団が苦手
もし、わが子にこんな悩みをお持ちなら、「うちの子、コミュ障かも?」と感じていらっしゃるかもしれません。
最近、「コミュ障」「コミュニケーション障害」という言葉をよく耳にするようになりました。コミュニケーションに関わる仕事に30年以上携わってきた者としては、とても気になるワードです。
インターネットでのいわゆる俗語(スラング)で、専門家による明確な定義はないようです。間違われやすいのですが、医療的な意味での「コミュニケーション障害」とは別物です。「あの人は、コミュ障だから」「私は、コミュ障だから」という使われ方をします。
何が気になるかというと、「コミュ障」というレッテルを人に貼りつけていること。しかも、この言葉には、「だから仕方ない」「治らない」「変わらない」といったニュアンスが含まれています。「コミュ障」は、「仕方ない」「治らない」「変わらない」ものではありません。
誤解している人が多いのですが、コミュニケーションは、持って生まれた属性ではなく、後天的に身につけることができる「スキル」なのです。
「コミュ障」「コミュニケーション障害」は、「通信障害」のようなもの、と捉えるといいかな、と思います。電波の状況が悪くて、一時的に通信が途絶えてしまったり、つながりにくかったりすることがありますよね。
それは、その「人」が悪い、わけではなく、その場所や、その時や、その状況が適切でない。その「通信」が適切でなくて、相手に届かなかったり、違うふうに捉えてしまったりしている、と考えてみてください。「通信」イコール「コミュニケーション」です。
ある意味、子どもはみんな「コミュ障」です。だから、これから学んで、いっぱい練習して、そして、上手になっていくのです。おうちという安心安全の場で、たくさん練習させてあげましょう。
この時代、これからの時代において、「コミュニケーションスキル」は、本当に重要になってくる、と考えています。人間でなくてはできない、と思われていた仕事もすでにAIに置き換わっています。
ほんの数年前に予測されていた「未来」は、もう「現在」になりつつあります。子どもたちが大きくなって社会に出るときには、どうなっているでしょうか。AIとの差別化をするために、人間ならではの「コミュニケーション」を、ということは、よく聞いている、聞いたことがある、と思います。
でも、本稿でお伝えしたいのは、AIと「人間」との差別化のことではないのです。お伝えしたいのは、目の前にいる「この子」のこと、「この子のコミュニケーション」のことです。
「コミュニケーション」を、薄っぺらな知識や情報としてではなく、学校での評価としてでもなく、その子の身体と心と深く結びついた、「使える」ものとして身につけてほしいのです。それが何よりの差別化になります。
子どもたちが社会に出るときに、たとえどんな世の中になっていても、「うちの子は安心」「この子なら大丈夫」。そう思って育てていきたい、ですよね? 時代がどうであれ、環境がどうであれ、必要な力、それがコミュニケーションのスキルです。
人は一人では生きていけません。何かあったときに、助けてもらえる力、その場にいる人と仲良くなる力もまた、コミュニケーションのスキルとして身につけることができます。
あっ、大丈夫、難しくありません。本稿では、おうちで手軽にできる、カンタンな方法をお伝えします。遊びながら、暮らしながら、コミュニケーションって上手になります。
当たり前にやっていることも、たくさんあるでしょう。それがどんなふうに「スキル」として役立っていくのか、知ってほしいと思います。パパやママが日常でいつもやっていることの価値を、改めて認識してくださいね。