「コミュ障」と「コミュニケーション障害」は別物…目が合わない子も練習で変わる

田嶋英子

視線が怖いと思う子どもたち

子どもたちの多くが、新しい環境になり、新しい人間関係をつくるときに、リアルでなく、オンラインだったという経験をしています。

それによって、「見る」「見られる」の機会が極端に少なくなった。またリアルで会えるようになっても、それに適応できない、適応しているように見えても実はストレスを感じているだろう子どもたちがいると、思います。

実際に不登校や行きしぶりは増えていて、そのことによってさらに「見る」「見られる」機会が減っているのです。大学進学や就職で子どもたちが手元から離れてしまう前に、おうちでできる対策をお伝えします。

おうちで暮らしながらできる「目を合わせる」練習

まず、視線に対する恐怖は、自分だけじゃなくて、誰もが感じる本能に根差した感情なんだ、と認識することが大切です。つまり、程度の差はあれ、特別に変なことではない、ということです。

思春期ころになると、それまであまり気にしていなかった「視線」が急に気になってくることがあります。自分がどう見られているのか、というのを意識する時期です。

好きな人ができたり、異性が気になったりします。好きな人を自分が見ていることを気づかれるのも恥ずかしい。でも、気づいてほしい気持ちもちょっとある。そんな時期ですね。

怖いとき、私たちは動物の本能として目をそらします。体勢は逃げようとするか、あるいは身がすくんで固まります。その体勢が、「怖い」という感情を大きくするように働きます。「怖い」と思う対象を見ないことが、さらに「怖い」という気持ちを大きくしてしまいます。

そして日本ではとくに、相手と対峙するときに目を合わせずにお辞儀をする、という文化があります。相手を直視すると失礼だ、と感じる文化的な要因も働いているようです。

欧米ではきちんと目を見て、握手する、というのがあいさつの文化です。アイコンタクトを取る、という表現もあります。目で合図する、という意味です。目を意識的にコミュニケーションに使っているんですね。

文化の違いにいい悪いはありませんが、日本では、「目を合わせる」というのが苦手と感じる人が多いようです。


あなたは人の目を見て話していますか? あまり人と目を合わせるのが得意ではないという方は、ぜひ子育てしているこの機会を使って「目を合わせる」「目を見る」ことに慣れてください。

おうちでは、あいさつのときや話をするときに、「目を合わせる」ようにしてみてください。いつもいつも目を見て話さなくてもいいですが、「相手の目が見れる」「相手と目を合わせられる」というのは、大切なスキルです。

私が以前勤めていた自己啓発系のセミナー会社では、コミュニケーション研修の一環として、「相手と目を合わせる」というトレーニングをしていました。参加者は、もちろん成人、大人ばかりです。

2日、あるいは3日かけて、コミュニケーションの各種トレーニングをするのですが、最初のトレーニングが「目を合わせる」です。無言で、目の前の相手と目を合わせます。

最初は、気恥ずかしくて、居心地悪くて、無意識に笑ってしまったり、目線を外そうとしてしまったり、話をしてはいけないのに、しゃべろうとしてしまったり。ただ単に目を合わせることが、大人になってしまうとこんなに難しいことなのか、と実感します。
 
あなたが子どもと「目を合わせる」ことで、子どもは「目を合わせる」体験ができます。 積み重ねるだけで、スキルが習得できるなんて、素晴らしいですよね。

おやつの時間に、アイコンタクトの練習

おやつの時間、子どもたちと一緒にテーブルについて、アイコンタクト、目と目を合わせる練習しましょう。

テーブルをはさんで座ります。
テーブルの上には、美味しいおやつ、飲み物。
パパやママも、好きな飲み物を用意してくださいね。
「手を合わせましょう」
「目を合わせましょう」
「いただきます!」


ちゃんと目を見て、あいさつできましたか? そうそう、いただきます! のときには、目を見る。目を合わせましょう。一瞬です。家族で一緒に手と目を合わせる一瞬の幸福感と、美味しいおやつで、心もお腹も満たしてくださいね。

もちろん、食事のときにやってもらってもいいのですが、食事のときって、親は座らずに子どもだけ食べさせているご家庭も多いんじゃないかと思います。ウチも子どもが小さいときは、自分が味わって食べた記憶がありません。

親も子も、落ち着いて食べられる状況とタイミングであれば、食事のときにも、「手と目を合わせて、いただきます」やってくださいね。

「見られて恥ずかしい」「見られるのがイヤ」「視線が怖い」は、「見る」というスキルで乗り越えられます。「受け身」だから、ネガティブな感情が切り替えられないのです。「見る」という能動的なスキルで、感情の切り替えができる子を育てましょう。

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