中学受験で「文系の親」が陥りがちな失敗とは? 大卒だから起こる勉強への誤解
中学受験のプロ家庭教師「名門指導会」代表の西村則康さんは、「子どもが塾に行きたいと言っているから」と、安易に中学受験を始めても良い結果につながらないことが多いと語ります。親が知っておくべき中学受験の落とし穴とは? 書籍『中学受験は親が9割 [令和最新版] 』より、家庭で気を付けたい習慣について解説します。
※本稿は、西村則康著『中学受験は親が9割 [令和最新版] 』(青春出版社)から一部抜粋・編集したものです。
「塾に行きたい」という言葉をそのまま信じない
「塾に行かせる理由」としてよくあるのが「子どもが行きたいと言っているから」というものです。しかし、子どもの「塾に行きたい」という言葉ほどアテにならないものはありません。
だいたいの場合、「友だちが通っているから」「友だちが面白い先生がいると言っていたから」という程度の理由です。そのときの気分だけでなんとなく言っているだけということも多いのです。
たとえば今通っている習いごとやお稽古ごとなどが面白くないから、そこをやめて別のところに行きたいという場合もあります。子どもに「中学受験に挑戦してみたい」「よりレベルの高い中学に進んで高度な学習をしたい」なんて気持ちは、まずありません。
お母さんがこれを真に受けて、というより「待っていました」とばかりに「じゃあ、中学受験をさせよう」と決意しないことです。これで中学受験を始めてしまうと、だいたい子どもがだんだんに行きたがらなくなり「自分で行きたいと言ったから行かせたのに!!」と怒る親がいますが、これは親のほうが間違っています。
中学受験、それにともなう塾というのは「子どもの自主性」にまかせるべきものではありません。家庭の方針で決めることです。親のほうも同じクラスの子どもが行っているから、となんとなく塾に入れてはいけません。塾に行っているといっても、本気で中学入試を考えている子も、補習として考えている子もまざっているからです。
また「習い事代わりに」「親が仕事から戻るまでの間塾に行ってくれれば安心」といった形で塾に行き始めるのも考えものです。こういう塾の使い方もあるでしょうが、中学受験につながるものではありませんから、はっきりと分けて考えるべきです。
親は勉強を教えてはいけない
そしてここが大事なことですが、「勉強そのもの」はお父さんもお母さんも教える必要はありません。というより、親は受験勉強を直接教えないほうがいいのです。それは、現在の中学入試問題が非常に難しくなってきており、昔ながらの勉強法ではとても解けないものが多いからです。
中学受験を考えるご家庭は両親ともに大卒というケースが多く、いわゆる文系であることも多いのですが、そうすると陥りがちなのが「頑張ればできるはず」という姿勢。
長い時間勉強して暗記学習に取り組む受験勉強をした、悪い言葉でいうとガリ勉タイプの人は、たとえば子どもが塾で成績が伸び悩んでいるような場合、「頑張れば大丈夫」「もう少勉強時間を増やしてみたら」というようなことを言いがちです。すると、子どもの成績は勉強すればするほど下がってしまうことがあります。
こういう場合にすべきなのは、本来は勉強量を減らし、本当にやるべきこと、今やらなくてもいいことを見直すことですが、逆にもっと頑張らせてしまうのです。これを続けると、子どもは「とにかくたくさん問題をやればいい」という大量演習型の学習や、暗記学習ばかりをするようになってしまいます。
文系の親・理系の親が陥りがちな失敗
ひと昔前の受験勉強といえば暗記が主流で、特に文系科目はひたすら暗記をすればかなりの点数がとれました。英語、古典、漢文はほぼ暗記がメイン。そして最も暗記に頼っていたであろう科目が日本史、世界史です。それが文系の親の印象に強く残っているのです。暗記を頑張ったから今の自分がある、と自負している人も多いでしょう。
現在も社会科だけは暗記しなくてはいけない項目が非常に多く、入試科目に社会が含まれることが多い関東の子どもたちは、「社会で点数を稼ごう」と、せっせと暗記します。するとある程度点数も伸びるので、ついほかの科目も「暗記型」の学習に頼ろうとしますが、結果的に全体の伸び悩みの大きな理由につながります。
私はこれを便宜的に「社会科脳」と呼んでいますが、文系の親にはこのタイプが多いのです。理科も暗記でなんとかなる、算数は問題をたくさんやればいい、国語は本をたくさん読んでいる子なら解ける、という風に考えてしまう。
むしろ入試で求められるのは「理系脳」です。といっても、理科と算数ができることが「理系脳」ではありません。公式を暗記するのではなく、その本質的な意味を理解して、初めて見るタイプの問題でも過去のプロセスや解法を組み合わせ、「今何がわかっているのか」を整理し、「どの考え方を使えば解けそうか」ということを予測して、実行し、さらにチェックできる「思考法」のことです。
この理系脳は、算数や理科ばかりではなく国語の問題を解くときにも必要。読解力、心理描写の理解にも、こうした論理的な思考が大切なのです。逆に言えば、国語の論理的な読解力があってはじめて、算数・理科・社会の問題を深く理解できます。
理系の親御さんにも気をつけておいていただきたいのは、前述したとおり「算数や理科は自分で教えられる」と考えないということ。最近の入試問題を見ていただいた通り、中学受験レベルでもお父さんお母さんが知らない知識、解法が無限にあり、プロの塾講師でさえ手こずるものが数多くあるのです。
実際の学習テクニックについては塾の先生にまかせて、自宅での「復習」をフォローしてあげるのが一番だということです。
『中学受験は親が9割 [令和最新版] 』(西村則康 著,青春出版社 刊)
「今は勉強が大変でも、志望校に入ってしまえばあとが楽なはず」「小学4年生になったら、レベルの高い大手塾に入れればいいんでしょ」「塾で出された宿題は、合格のために全部やらせなきゃ」これらはすべて、親の誤解に基づくやってはいけない考え方なのです。
これまで灘、開成、桜蔭などの難関中学に3000人以上を合格させてきた塾ソムリエ、カリスマ家庭教師の著者が、志望中学に合格するという目標にどう立ち向かい成就させるか、まだ情報がゼロの人にもわかるよう解説していきます。
ぶれず、迷わず中学受験に取り組むためのバイブル的な一冊です。