引っ越し、入園、入学を境に子どもの様子が変? 「SOSサイン」への親の対応法

日下紀子
2023.12.12 15:00 2024.01.05 07:00

子どもたちは、どう感じてる?

小学生の男の子

新しい生活、新しい環境は子どもたちにはうれしい反面、不安も大きいものです。ここでは、よくある環境の変化を取り上げ、それが子どもたちにどのように影響するのかを見ていきましょう。

【引っ越し】
子どもの興味・関心をしっかり受け止めてあげましょう

引っ越し先は、親にとって見ず知らずの土地ですか? それともなじみのある場所、親しい知人や親戚、家族がいる場所ですか? それらが子育てに与える影響は少なくないでしょう。

引っ越しには別れが伴い、その喪失感や寂しさを抱えながら、新しい環境で子育てに取り組むとき、まず親が頼ることができる他者や社会資源とつながることが大切です。そして、これまでの人間関係ともつながりながら、徐々に新しい関係が生まれてきます。

子どもにとっても同じです。かつて住んでいた場所、これまでの友だちとのつながりを親子ともども大切にしながら、徐々に現在の生活環境や人間関係になじんでいきましょう。

子どもたちは、もしかすると「まっくろくろすけがいたよ」などとファンタジーの世界に入り込み、突飛な発言をしては大人を驚かせるかもしれません。

そんなときは、子どもの豊かな心の世界を否定することなく、「そうなんだね。どんなのだったの?」とまず興味や関心をもって受け止めたいものです。

兄妹

【入園】
子どもの変化をどっしり受けとめて

子どもの年齢によっても異なりますが、初めての新しい集団に入り、担任の先生を独占することはできないし、他の多くの先生や異年齢の子どもたちとかかわり、園でのルールに従って遊具やおもちゃの貸し借りを覚えなくてはなりません。

特に乳幼児は、言葉での交流は難しいため、おもちゃや遊びをめぐって、時に手が出たり、かみついたりしてしまい、トラブルも少なくありません。

さらに入園当初しばらくは、頻繁に発熱や様々な感染症などの病気や体調不良に悩まされることがあるでしょう。そうした経験を積み重ねて、子どもの心と体は、強くなっていきます。

親は子どもの変化にあまり一喜一憂せず、どっしりと受け止めることを心がけましょう。

野原を走る小学生たち

【入学】
劣等感を抱きやすい時期。挑戦する力を伸ばしてあげましょう

幼稚園や保育園とは違って、小学校では、1人で、あるいは集団で登下校します。家から学校までの距離が遠い場合は、かなりの体力と注意力を要します。また、放課後をどのように過ごすかは、特に共働きの親にとっては心配の種となるでしょう。

教室内で着席して授業を受けることができるのか、課外活動やクラスの役割(当番)はこなせるのだろうか。子どもたちは「1年生だからできるもん」といった気負いや期待を抱きながら、国語の読み書き、算数の計算などの教科に対して地道に取り組むことが求められます。

そのような成長のプロセスでは、友だちと自分の能力や容姿などを比較し、劣等感や恥を感じるようにもなります。

学童期では、劣等感に圧倒されて「どうせ自分はできない」とあきらめてしまうのではなく、失敗しながらも次の成功を目指す挑戦力、忍耐力を子どもたちは培っていきます。

小学生

【先生、友だちづきあいの変化】
園や学校での様子を、どんな些細なことでも聞いてあげましょう

進級に伴い、クラス替えなどで先生や友だちづきあいは変化します。新しい学年になることは、1つ成長したしるしであり、進級するとクラス集団の様子はかなり変化することがあります。

クラス替えによって、親しい友だちと離れてしまうかもしれません。仲良しの友だちが他の友だちと一緒にいる場面を目撃して嫉妬し、間に割り込みたくなる気持ち、友だちを独占したくて他の人を寄せ付けたくない気持ちを感じるかもしれません。ドキドキ・ワクワクだけではすまない複雑な感情を胸に抱くことがあるでしょう。

しかし、幼い子どもは、やはりまだそのような思いも人間関係も、うまく消化し対処できるわけではありません。これまで述べたような心や体の変化で現われたり、時に不安や劣等感を強めてくよくよしたりもするでしょう。

そんなとき、できるだけ園や学校での様子をそっと、直接子どもに聞いてみましょう。話したがらないときもあるかもしれませんが、そんな様子も受け止めつつ、どんな些細なことでもなんでも話をしていいんだよ、というメッセージを伝えてみましょう。

子どもたちが健やかに育つために

草原を歩く親子

・できるだけ子どもに挑戦させよう

人間には、知識欲があると言いますが、知らないことを知る喜びや楽しさは、学ぶ意欲につながります。子どもが自ら「お手伝いする」「おつかいに行く」と言い出したとき、「あれはなに?」「なんで?」という質問攻めにあったとき、どうしますか?

大人は、「自分たちがしたほうが絶対にうまくいくし、早くできる」「危険だからまだ子どもには任せられない」「忙しいから後にして」という思いから、子どもに応えられないときがあります。

しかし、子どもができることは、できるだけ子どもに挑戦させる覚悟をして、子どもの「自分でやってみたい」や「なぜ? なに?」の質問に応じてみましょう。そのときは、一緒に楽しむ心のゆとりが親にも少し必要です。

・転んでも起き上がる力を!

手をつなぐ親子

思春期になってから、「もう! お手伝いも何もしないでゲームばかりしている!」と親子喧嘩する家庭では、お手伝いをまったくさせてこなかったということが多いものです。誰しも、経験していないことはできなくて当然です。

子どもの「したい!」「どうするの?」「あれはなに?」は、主体性や自発性の芽吹きです。もちろん、できることとできないことはあります。それを子どもが知り、挑戦し失敗するなかで、行動の責任を引き受け、失敗しても挫けずに、転んでもまた起き上がり挑戦する”しなやかな心”を、健やかに育んでいきましょう。