中学受験を諦める前に…小学生にありがちな「つまずきポイント」の乗り越え方
中学受験に向かう道のりでは、親子ともにつまずきや悩みを抱えることがあるでしょう。
中学受験の第一線で30年以上指導してきたプロ講師・渋田 隆之さんは、「“ずっと順風満帆だった”というケースは一つもない。誰もがつまずき、悩んでいる」 と言います。
渋谷さんに、実際の受験生の保護者からの質問に答えてもらいました。
※本稿は渋田 隆之著『2万人の受験生親子を合格に導いたプロ講師の 後悔しない中学受験100』(かんき出版)から一部抜粋・編集したものです
「勉強を長時間続けることができません」
「うちの子は、長時間勉強できません。自分の部屋で勉強しているかと思ったら、すぐ冷蔵庫の飲み物を飲みにきたりしています。静かだなあと思って部屋をのぞいてみたら寝転がって漫画を読んだりしています。何かよい方法はありませんか?」
まずは、漫画とゲームをリビングに移動させましょう。勉強の復習はしないのに、漫画は1巻から読み直すという姿はよく見られるものです。ゲームは時間を決めるのも一つの手ですが、ゲーム会社のたゆまぬ企業努力によって、途中でやめるのが難しいつくりにもなっているので、そもそもすぐ手に取れない環境を作りましょう。
また、冷蔵庫と机の往復が気になる場合は、家庭でも水筒やペットボトルで水分補給するようにすると、一発で解決できます。
長時間勉強をするときの気分転換のコツをいくつかご紹介します。
・ストレッチ
同じ姿勢でいると筋肉が緊張して疲れやすくなるので、「体をねじる」「肩や首を動かす」と効果があります。
・勉強する場所を変える
自分の机で勉強して疲れてきたら、リビングでやってみるなど、環境を変えるとリフレッシュ効果がかんたんに得られます。
・科目を変える
気分転換に「漫画」「ゲーム」「テレビ」に走ると、そちらがメインになります。国語の文章読解で疲れたら、算数の計算をやるなど「科目を変えること」を試してください。とくに計算、漢字や語句の暗記などを短時間はさむとよいです。
「気が弱くて本番が心配です」
「うちの子は、問題が解けないとすぐにメソメソと泣いてしまいます。模試の結果がよかったときは大丈夫ですが、悪かったときは毎回落ち込みます。受験に向いてないのでしょうか」
まずは、落ち込むぐらい一生懸命に取り組んでいることを、前向きにとらえてあげるところからスタートしてください。
「我が辞書に不可能はない」という言葉は、ナポレオン・ボナパルトの名言として知られています。しかし、そのナポレオンも妻のジョセフィーヌに対しては、手紙でこのように心情を吐露しています。
「私の生活は、不断の悪夢だ。不吉な予感で息もつけない」
この手紙は、ナポレオンが世界から絶賛されているときに書かれたもの。何かに立ち向かっている人は、不安からは逃れられないことがわかります。逆にいうと、「不安なときは、戦っている証」です。 「不安な気持ちになるよね」と気持ちに共感してから、「悲しいのは、本気でがんばっているからなんだよ。努力していることを、ちゃんと見ているからね」などとよりそってあげてください。
もう一つお伝えしたいことは、保護者が心配性の場合、子どももそうなりがちだということ。塾でも、生徒が教室長の性格に似ていくことが多いと、長年の経験で感じています。
子どもの性格は、まわりの大人の影響を強く受けるので、保護者もできるだけポジティブで大らかに物事をとらえるようにすることをおすすめします。
なかなか成績が伸びません。塾が合ってないのでしょうか
「塾に入って半年経ちますが、なかなか成績が伸びません。このまま同じ塾に通い続けていいのでしょうか『塾はどう?』と聞いても『別に』としか返ってきません」
塾に行くときに行き渋ったりしていないのなら、その塾が合っていると判断していいと思います。塾から戻ってきたときの様子が元気であれば、なおさら安心です。
成績に関しては、全員がマラソンのように走り続ける中でつけられるものなので、偏差値や順位にはなかなか表れてこないと思っていてください。
逆に心配なのは、その塾が指導するレベルより、本人の学力が高い場合です。苦労せずに点数が取れるので、居心地がよいけど学力がそれ以上伸びないというケースがあります。塾の小テストがいつも満点で、宿題もすぐ終わって暇そうにしているなどの場合は、塾に様子を問い合わせてみてください。
「危機感がなくて心配になります」
「うちの子は、2年生から塾に通いはじめてもう4年になります。あとから入ってきた子たちに成績をどんどん抜かされてしまって、正直焦ります。それなのに、子どもは平気な顔でニコニコ塾に通っているのが信じられません。もう少し、悔しいとか負けてなるものかなどと思ってほしいのですが」
上昇志向を持ってほしいという気持ちはよくわかります。しかし、受験生全員が、競争が好きだったり負けず嫌いだったりするわけでもないのは事実です。それを子どもに無理に求めてしまっても、いい結果が出るとは思えません。まずは、長い間勉強を続けられていることが、一つの才能だととらえてあげてください。
画家ルノワールの友人セザンヌは「あきれるほど絵が下手」とされていました。
セザンヌは、印象派の立ち上げメンバーですが、みんなに「下手だ」と笑われて南フランスに帰ってしまったというエピソードがあるほどです。親の遺産を使って、それでもうまくならないのですが、ずっと描き続けているうちに時代(価値観)が変わり、セザンヌの絵を「おもしろい」とする評価が増えてきたのです。とくに、ピカソは自分の画力が高すぎることから、「セザンヌのようには描けない」と白旗をあげたそうです。
「続ける」ことは、それだけですばらしいことです。また、他人の見方なんて、時代によって変わります。誰かに勝ちたい、一番になりたいという情熱がなくても、後悔のない中学受験にすることはできます。ありのままの子どもの姿を受け入れてあげてくさい。
「塾の宿題が多すぎます」
「塾の宿題が多すぎて終わりません。親が減らしてあげるべきでしょうか?」
塾の宿題は、とくに入塾したばかりのころや苦手教科がある場合は、すべてをこなすのが大変だと思います。習いごとや小学校の行事が忙しいときは「全部をやらないと絶対にダメだ」と思い込みすぎないようにしてください。
塾によっては、まったく宿題を出さないところや、漢字や計算、暗記などの反復のみのところ、分量を各科目の先生と調整して負担を少なくするところがあります。
宿題がやり切れないという理由で塾に行きたくなくなったり、やる、やらないで親子喧嘩をしたり、睡眠時間が取れなくて体調を壊したりすると本末転倒です。まずは、塾に現状を伝えて、改善策を探ってみてください。本人が宿題のやり方がわかっていなかったために、無駄な時間があったことに気づいた例もあります。
「受験直前に子どものメンタルが落ち込んでしまいました」
「受験直前に子どものメンタルが落ち込んでしまいました。どう接するのが正解でしょうか?」
しっかり勉強をさせて「できた」という実感を持たせる、というのが正攻法ではありますが、現実的にはそれがうまくいかないからメンタルが落ち込んでいるということが考えられます。
この状況では、学力をつけることよりも、メンタルを回復させることを最優先にするべきです。落ち込んでいる原因を具体的に探ることも大切ですが、本人も気づいていない漠然としたことが理由になっているかもしれませんし、理由が一つではない可能性もあるので、突き詰めて考えすぎないようにすることも大事です。
私が重視しているのは、「気分転換」と「ストレス発散」です。
受験直前期は、脇目もふらず勉強づけになっていることがほとんどだと思います。少し勇気がいるかもしれませんが、思い切って本人の好きな趣味に1日没頭させることでうまくいったというケースがあります。1日勉強から離れて頭を空っぽにすることで、狭くなっていた視野がぐっと広がるということだってあります。
ある女の子は、「落ち込んだときは、家族でケーキバイキングに行ったらすっごい元気になった!」と報告をしてくれました。家族みんなで時間を過ごすのも、一つのポイントだと思います。
関連書籍
2万人の受験生親子を合格に導いたプロ講師の 後悔しない中学受験100(かんき出版)
2万人を超える受験生親子を合格へ導いてきたプロ講師が、 中学受験で悩み、迷っている人の手助けとなる100のヒントを紹介します。
□塾はどう選べばいい? 大手だったら安心?
□勉強の習慣をつけるコツって?
□志望校はどうやって決める? 変えるのはNG?
□学校を見学するときのポイントは?
□模試の結果は、何に注目すればいい?
□受験直前期、子どもとどう接するべき?
などなど、受験をするか迷っている人にも、塾に通っている人にも役立つ!
著者の教え子とその保護者のエピソードも満載です。