「子どもと目が合わない」が気になったら…発達障害の子を伸ばす「共同注意」

熊仁美、竹内弓乃
2023.04.28 17:45 2023.06.06 11:50

【STEP4】社会的参照

遊ぶ子

【曖昧な指示】

子どもと向かい合って座り、近くにいろいろなものを置いておく。「ねぇ、ソレちょうだい!」とわざと曖昧な声かけをする。子どもが、どれか1つ選んで渡そうとしたら、受け取らずに待つ。

受け取らないので、子どもが「あれ?」と思って顔を見たら、無言で顔をしかめて首を横に振り、「違う」ことを伝える。子どもが意向に気づき、他のものを選んで渡そうとして、顔を見てくれたら、ニッコリ笑ってうなずきながら受け取る。

【未知のもので】

子どもが名前を知らなそうなものをいくつか並べておく。たとえば、「ねぇ、万年筆とって」と頼み、子どもに正解がわからない状況をつくる。

試しにどれか選んで渡すよううながし、子どもが顔を見たら、間違っていればしかめ面で首を横に振り受け取らず、合っていれば笑顔でうなずいて受け取る。

[困った状況で]

たとえば、おもちゃの電池交換を、子どもに「やってごらん」と道具を渡して、そばで黙って見守りながら待つ。どうやるんだろう?と子どもが困ってこちらを見たら、「難しいね! どうするんだろう?」とすかさず共感の言葉をかけ、一緒にやってあげる。

小さい頃から取り組むのが大事な理由

ママの話を聞く子

お子さん始発の共同注意をうながす取り組みを、いろいろご紹介しました。

特に、ここでご紹介したSTEP1にある「ナレーション」や「逆模倣(お子さんの行動を真似する)」は、発達初期のお子さんには特にオススメの関わりなので、ぜひ覚えて実践してみてくださいね。お子さんの、人への興味を育てるために、困ったらいつでも立ち返ってほしい内容です。

大人は時々、「相手の目を見て挨拶しなさい」とか、「先生の顔を見て話を聞きなさい」のように、特に子どもの納得できる理由もなく、アイコンタクトを強いることがあります。「挨拶は目を見てすると気持ちがいい」とか、大人なりの理由はあるのですが、お子さんにとっては必然性がないことなので、何度言っても目合わせが定着しません。

これが、小さい頃から丁寧に取り組むのが大事な理由で、「目を合わせたらリアクションが面白かった」「顔を見ると有効な情報が得られた」という経験を繰り返し積むことで、「相手の反応が見たい」というポジティブな動機づけから、自発的なアイコンタクトや共感の行動が育っていくのです。

ネクストステップ

双眼鏡を使う子どもたち

始発型共同注意は、大人が日々意識して関わると、1週間ぐらいでもグッと増えてくることがよくあります。ただし、「できるようになった」と思って、大人があまり意識して引き出したり褒めたりしなくなると、すぐに減ってしまうこともあります。

特に、言葉が出ていろいろなことを話せるようになると、逆に、アイコンタクトが減っていくこともあります。大人もつい、言葉でわかるので、目合わせを待つこともオーバーリアクションも忘れてしまいます。

もちろん、言葉で伝わることは素晴らしいのですが、人間のコミュニケーションは、言語によるものよりも、ノンバーバルの要素が大きいことは、よく知られています。ぜひ、いつでも忘れず取り組んでみてください。

「できる」が増える!「困った行動」が減る! 発達障害の子への言葉かけ事典

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