安易な「ほめて伸ばす」がかえって子どものやる気を奪ってしまう理由
3つのほめ方の研究
研究例:ドゥエック博士とミューラー博士(1998)
研究内容:
1)128人の小学5年生を3つのグループに分けて実験
2)子どもたち全員にIQテストを受けてもらい、テスト後にそれぞれのグループに3種類の違ったほめ方をした。
グループ1には「こんな問題ができるなんて頭がいいね」と能力(人中心)をほめ、グループ2には「問題を解くためにあきらめずにがんばったね」と努力(プロセス中心)をほめ、グループ3には「よくできたね!」とおざなりにほめてみた。
グループ1:人中心ほめ
グループ2:プロセス中心ほめ
グループ3:おざなりほめ
3)子どもたちに、次に挑戦する問題について簡単なテストか難しいテストを選んでもらうように聞いてみた。
結果:能力をほめられた子どもたち(グループ1)の67%が簡単なテストを、努力をほめられた子どもたち(グループ2)の92%が難しいテストを選択。おざなりのほめ方をされた子どもたち(グループ3)の選択は半々に分かれた。
4)今度は子どもたちに先ほどよりも難しいテストを解いてもらって、あまり成績がよくなかったことを伝えた。その後、子どもたちにこの難しいテスト問題を解き続けたいか、楽しかったかを聞いてみた。
結果:能力中心とおざなりのほめ方をされた子どもたちの多くがこれ以上続けたくないと言ったうえに、問題を解くのはおもしろくなかったと答えた。一方で、努力をほめられた子どもたちの多くがもう少し長くテストを続けたいと言ったうえに、問題を解くのは楽しかったと答えた。
5)最後に子どもたちに最初に実施したテストと同等レベルのテストをもう一度実施した。
結果:能力をほめられた子どもたち(グループ1)の成績は最初と比べて約20パーセントも低下した。一方で、努力をほめられた子どもたち(グループ2)の成績は約90パーセントも上昇した。おざなりのほめ方をされた子どもたち(グループ3)の成績に大きな変化はなかった。
まとめ:努力をほめられた場合、失敗の後にもチャレンジする意欲的な姿勢(グロースマインドセット)を見せる子どもが多かったのです。逆に能力をほめられたり、おざなりなほめ方をされたりした場合、 チャレンジに直面したときに消極的で挫折する(クローズマインドセット)子どもたちが多かったのです。
この実験結果からもわかるように、人中心(例:能力)やおざなりなほめ方をした場合、子どもの上昇志向を止めてしまう可能性があるのです。
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