子どもの問題行動をどう注意する? 親がしがちな「効果のない叱り方」

伊藤徳馬
2023.09.15 15:13 2023.10.17 11:50

叱られて泣く女の子

「商品を触ってしまう」「お風呂場で走ってしまう」など、子どもが問題行動をとった時に、親はどのように対処すればよいのでしょうか?

本稿は、伊藤徳馬さんによる子育て講座「ちはっさく」を再現するものです。ちはっさくとは、「代わりの行動を教える」「気持ちに理解を示す」「待つ」「聞く・考えさせる」といった、基本的な子どもへの対応方法を楽しく練習して身につける講座です。子どもに思わず怒鳴りそうになっても、冷静に対処するために「青カード(=肯定的なコミュニケーションの取り方)」の言葉を練習しましょう。

伊藤徳馬
民間企業を経て、2004年に茅ヶ崎市役所に入庁。2007年から子育て相談・児童虐待対応担当になり、2010年に子どもへの対応方法を練習する講座を事業化。その頃から「市町村の児童虐待対応」や「簡易なペアレンティングの講座展開」などのお題で講座・研修講師をするようになる。 現在は、福祉の総合相談や計画を担当する部署に所属。プライベートで、子育てを練習する講座「ちはっさく」を一般向けに実施している。 現在、神奈川県、埼玉県、千葉県、鳥取県の十数か所の自治体・民間団体が「ちはっさく」を事業化しており、今後も増加する予定。 

「~してね」「こういうときは、~するんだよ」

真剣な顔の子ども

1つ目の青カードは「代わりの行動を教える」です。子どもが問題行動を起こしたとき、「~してね」とか、「こういうときは、~するんだよ」と伝えます。

さっそく練習してみましょう。この記事での練習は、なるべく声を出して本番風に答えてください。リアルに練習するのが大事なんです。

恥ずかしい小芝居ですが、誰も見ていなければ堂々と声を出していきましょう。声を出せない環境で読まれているのであれば、頭の中でリアルなイメトレをしてください。練習に出てくる子どもは4歳の太郎くんとします。

風呂場で走り回る太郎くん

ママと太郎くんの二人でお風呂に入るとき、太郎くんは脱衣所で服を脱ぐと勢いよく走って風呂場に入りました。幸い、太郎くんは滑って転んだりすることはなかったのですが、これは危ないなと思ったママが太郎くんに注意する場面です。

では、シンプルに「~してね」と太郎くんに「代わりの行動」を教えてください。

こう言えたらOK!
「お風呂場には歩いて入ってね」

思わず叱ってしまうけれど…

叱られる女の子

さあ、どうでしたか? シンプルに言えましたか? 普段こんな場面があったら、次のように対応したりしていませんか?

・もういい加減にして! ちゃんとしてよ!(あいまい)
・走らないで!(否定形)
・言うことを聞けないなら洗ってあげないよ!(脅す)
・なんでそんなことするの!? どうして走るの!?(質問風の攻撃)
・もし足を滑らせて頭を打ったらどうするの!? お風呂は危ないところなんだよ! 湯船の中で転んだら溺れることもあるし、もしもママが見てなかったらあっという間に溺れるんだよ! 家の中でお風呂は一番危ないところなんだからね!(長い説明)
・危ないってことがわからないんだね。毎回注意されて楽しい?(いやみ)
・危ないことをしたから、風呂上がりのアイスはなしね!(罰)
・※ここまでの内容を怒って大声で話す(どなる)

思わず言ってしまいますよね。でもこれ、大丈夫ですからね。「これを使ったらダメな親」なんてことではありません。

思わず使ってしまうのはしょうがないんだけど、親子ともにストレスがたまるばかりで、子どもには大して伝わらなくて、親もしんどくなるばかりなので、できれば避けたいですよね、っていうものです。

一方で、青カードは育児本やビジネス本、デート本などでさんざん紹介されてきている肯定的なコミュニケーションの取り方なので、使う頻度を高くできると、そりゃあいくらかは子どもとのやり取りがスムーズになりますよ、というものになります。

ここからが大事なことなのですが、風呂場に走って入った太郎くんに、青カードを使って「歩いて入ってね」と伝えたからといって、太郎くんが素直に言われたとおりの行動をすぐにできるかというと、そんなに甘いもんじゃないですよね。

でも、「何やってんの!? いい加減にしてよ!!」と対応するよりかはマシです。青カードのほうが、伝わる可能性はいくらか高くなります。

この青カードの練習は、日々の積み重ねで地味に効果を上げていきます。みなさんはほどほどの期待値で、楽しい練習に取り組んでくださいね♪